年末を迎え、エルフの里の和食店にも朝からたくさんの客がやってきて大変にぎやかです。 お昼時の丼物や定食もありますが、やはり人気なのは年越し蕎麦。 どのテーブルでも蕎麦の注文が入って（ついでに酒や肴も）、鈴音や白露が打ちたての蕎麦をせっせと運んでくれます。 「まだ支度全部終わってないのに、のんびり外食で大丈夫かのう？　母様」 「本日は大晦日、神々にお仕えする我々は今宵から大忙しじゃ。気分転換にはちょうど良かろう」 「朝からおせち料理作るのも大変だもんね」 「そうじゃ、神事と祝い事に抜かりがあってはならぬ。於梅も於銀も今のうちに英気を養うが良い」 「今年も大きな丸いケーキが食べられるのじゃな。わらわは今から楽しみじゃ」 「お正月はとっても忙しいけど、楽しいことも多いよね。ねえねえ、白露はお正月はどうするの？」 「ん？　ああ、お店は今日は特別に深夜までやってるよ。松の内は初詣客相手に屋台出して甘酒や雑煮をふるまうけど、最後に七草がゆを出して、それからは一週間休業。どうせだから暖かいところに旅行しようかって、兄ちゃんが思案してる。オルティス様が別荘を貸してくれるんだって」 「白露殿もご苦労じゃのう。雅雪殿と鈴音殿にお年玉ははずんでもらえそうか？」 「訊いても兄ちゃんと姉ちゃんはニヤニヤするばかりでさあ。クリーチャー商店街の移動遊園地で遊べるくらいは行けるんじゃないかなあ」 「おお、わらわも遊びに行きたいのじゃ。白露殿も一緒にどうじゃ」 「いいねえ、みんなで行っちゃおうか」 「ほらほら、白露も手を休めていないで。ヤコさんには今年もお世話になったわね」 「鈴音殿にも世話をかけておるのう。稲荷寿司もお揚げもいくら食べても飽きぬわ」 「そうじゃ母様、お正月も稲荷寿司の出前あるのじゃな」 「ええ、年明けで忙しい皆様のために食べごろをお届けしますわ、タヌキお握りもね。あれ、何故か悪魔教会にも大人気なんだけど」 「あ、教会の鐘の音が聞こえてきた。百八つ叩くんだよね、ヤコ母さま」 「そうじゃ、本来はお寺が鐘を突くものじゃが、里ではいつの間にか教会が鳴らすものとなったようじゃな」 皆さま、良いお年をお迎えください。