「あらー、カイト先生にがくぽ先生、こんなところで夕涼みですのよー？」 「やあ、明石さん。まだ予約の時間まで少しあるからね、軽く一杯やっているところさ。外の席に呼ばれたのかい？」 「ええ、おかげさまでたこ遊郭も予約が少々取りづらい日もございますのよー。その分、皆様に少しでも還元すべく、本日も楽しい催し物をいろいろご用意してお待ち申し上げておりますのよー」 「それは楽しみだ。ボーナスも入ったしよろしく頼むよ」 「そのアニキのボーナス、たこ遊郭でいくら消えるのかしらねえ」 「貯金くらいはちゃんとしているから安心しろ」 「本当かしら」 「……ということで、今日はルカちゃんのおごりだな、うむ」 「ちょ、ちょっと待ってよ、がくぽ兄ちゃん」 「そりゃあ、俺らの心配してくれるくらい一番貯め込んでそうだし、そもそも中の人やっていたら、普段はあんまりカネ使う機会ないだろう？　社宅住まいで飯は三食ついてきて、おまけに近頃はゆかりと組んでチャコ様やお嬢様たちの護衛やってるからいろいろ役得もあるだろうし」 「そうそう、だから俺たちで使い道のないルカちゃんのずっしり重そうな財布を、少しだけ軽くする手伝いをしてやろう」 「はああああ！？　なんでそうなるのよー」 「これは大変なのよー。ルカさんのために選りすぐりのたこ遊女たちを取り揃えてお待ちしてるのよー」 「じゃあ、今日は私の好みでやるから。いいわね？」 「スポンサーにはかなわんからな。津久井さん、みんなのマグロは赤身でいいかい？」 「もちろんなのよー。ちゃんと準備しておくのよー」

たこ遊郭の遊女たちは、時には外のお座敷に呼ばれて舞踊を披露することがあります。 お値段はそれなりに張りますが綺羅の空間を手軽に楽しめるとあって、ご贔屓客からの引き合いが絶えることがありません。 「今夜は北米様主催の大切な宴会があるのよ。たこ遊女のあでやかな踊り、期待しているわよ？」 「北米様には日頃からのご愛顧、誠にありがとうございますのよー。わたしく明石以下、選りすぐりの踊り手を連れてまいりましたので今宵は夢のようなたこの舞を、存分にご堪能くださいませなのよー」 「ルカさんもお着物とってもおきれいなのよー」 「ふふふ、津久井さんこそ今日は一段とお肌がつややかプルプルね」 「あらー、ルカさんすっかりお上手になったのよー。ひょっとしてカイト先生とがくぽ先生のお陰かにゃあ？」 「まあ、アニキたちに連れられて遊郭通いしてると……ねえ？　それだけ我が一族は相当そちらにおカネ落としてるんだから、その分もまとめてサービスしてほしいわね」 「ほほほ、ルカさんのためにもみんなでたくさんおもてなしするのよー」 「今日の私は警備上の都合で正装してるだけで、残念ながらあんまり踊りを見ている暇ないのだけれど、その代わり、私たちが次に座敷に上がった時にはサービスお願いね？」 「もちろんでございますのよー。たこ遊女一同、お待ち申し上げておりますのよー」