もしも、僕がこの目を閉じたら。 僕の亡骸は、ここに捨てていって。 代わりに、この刀を持っていてくれればいい。 僕は君の守り刀となって、これからも君と生きよう。 僕は、殺すためだけに生み出された存在。 人々の恩讐を身に浴び、焼け爛れる腐肉を食らって、 今日まで生き延びてきた。 僕にそれ以上の価値なんて必要なかった。 欲しいとも思わなかった。 そう思える機会が、なかったから。 君と出会ってからは、僕にとって衝撃の連続だった。 思いのほか強く握り返す手のぬくもりも、 逸らさずに真っ直ぐに見つめ返してくる眼の光も、 これまでの僕には全く知り得なかったものだった。 真っ直ぐにぶれずに信じる君のその行動が、 猫の目のように変わる愛らしい君の表情が、 否応なしに僕の世界を押し広げていった。 気が付けば、僕の周りは君のくれた物で一杯になっていたんだよ。 君は命の重さを知る稀有な存在。 そんな君が、僕にすらも命と同等のものを与えてくれた。 君がいてくれたから、僕はここまで来ることができたんだ。 もうすぐ僕は消える。でも、悲しまないで。 僕が消えても、僕の想いはこの刀に籠っているから。 だからどうか悲しまないで。真っ直ぐに前を見て、進んでいって。 いつかまた、会えるよ。いつかきっと、会えるよ……