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「少し昔」であるならば多分彼女は「どちらも選ばなかった」だろう。 「自分さえ生き残れば良い」と考えていた「あの頃の自分」であるならば。 しかし今の彼女はやはり「どちらも選べない」でいるのだ。 但しその意味する所は「あの頃」と全くの「真逆」であるのだが。 今の彼女は「いずれ」も「選べない」。 いや「選びたくない」のだ。
「これ程の事」をたった一人でやらかす位だ。 それだけでもこの少女が相当に凄く、そしてヤバい奴であるというのは当然理解出来るのだが、「それ」を相当な、いや壮絶なまでの「覚悟」を以って挑んでいるという事にこの恐るべき「ラスボス」ですら慄然とせずにはいられなかった。
「それ」はたった数秒の間の「刹那」の刻。 だが逆神にとっては短くもあり、或いは久遠の刻であるかの様にも感じられる。 そんな奇妙な感覚に揺蕩うた「刹那」であった。
アンアンの話を横で聞いていた逆神も彼女の言葉に同意する。 逆神も伊達に「ラスボス」と言われる存在では無い。 スマイル組や薫達ら過去のプリキュア達からも認めらる実力を持つ者だからこそアンアン同様に今目の前に映る「存在」が自分よりも、薫達「原初世代」よりも、もっと言えばあの最強の魔導士たる魔法組よりも遥かに次元に違う「存在」である事を人一倍強く感じ取っていた。
だが――「何か」が明らかに「違う」のだ。 姿こそ確かに「アイツ」と同じに見えるのに「雰囲気」も発する「気配」も、何もかもがあの時感じたものとはまるで「違う」のだ。 逆神は分からなくなった。 今あの場に居る「アイツ」はあの時見た「アイツ」と同一者なのかどうかという事が。
その様はまるで「観客」をも「舞台」の一部として取り込んでいく小劇場の「演劇」を彷彿とさせる――――そんな「錯覚」にこの場に居る者、この場を視ている者達は知らず知らずの内に皆逆神の「話術」に「飲み込まれていた」。
「それ」を眼前に見た瞬間、逆神は即座に「感じ取ってしまった」。 「それ」の放つ何やら得体の知れぬ「不吉さ」を。 「それ」が纏う何やら得体の知れぬ「おぞましさ」を。
そう、今あの場に立つのは嘗て自分を止める為だけに「遥かなる過去の彼方」からやって来た者。 道を誤った自分を止めに、いや「救い」に来た者だった。
決定的に違うのは「建前」や「性善説」に捕らわれがちな「国家元首」と違い彼女は自らが言う様に「悪党」であるという事。 「悪党」にはそんな「しがらみ」などは関係無い。 自分の好きなように生きて、好きなように行動する。 誰に何を思われようが言われようがそんな事は関係無いしどうだっていい。 だって自分は紛う事無き「悪党」なのだから。 そう彼女は「割り切っていた」。
「これ」が逆神の例の「対話術」のちょっとした応用であるのかどうか。 そして彼女が「それ」を意識的に、意図して行っていたか。 或いは無意識の内に言の葉に「力」が乗ってしまったが故の「結果」なのかどうかは「神」は「神」でも「逆神」という名を持つ彼女のみぞ知る事なのではあるのだが、いずれにしても彼女の「思惑」通りにこの「事態」を少なくともこの場に於いて落着させるのには十分なモノとなったのは間違い無かった。 後はこれを受けて当の「共犯者側」と「被害国」の元首達がどうするかだが―――
もし、この場にデスパライアが、カワリーノが、ブラッディ―がいれば彼女を止めるのであろうか。 もし、この場にマリン達がいれば自分達を引き渡せとでも言うのであろうか。 だが、その者達は今この場には居ない。 そして彼女は今直ぐこの場で、しかもたったひとりで決断しなくてはならない。 もう既にあと二分を切ったその僅かな猶予の内に。
「変身」を終えた逆神は直ぐキリコにこれからの行動に関しての指示を出す。 その姿はつい今しがたまでの動揺はすっかり消え失せており、氷の様な冷徹さすら感じられる。