一方のミクちゃんたちは、村の広場前の屋台でお昼ごはんをいただいてました。 「ここの屋台、夜になると街の駅前に場所を移してお店開いてるのよー」 「ああ、そういえば見たことあるわ。ちょっと遅い時間からやってて、サラリーマンとかオトナの人たちがお酒飲んでるから、ここで食べたことはなかったけど」 「新澪たこさんは、黒澪先生とよく食べにいってるらしいのよー。お酒の後のシメに、ここのラーメンは最高って言ってたのよー。ともかく、街に出ればはいくらでも美味しいお店あるから、村にはあまりないのよー。あるのはカフェと屋台と、一部の夜のお店くらいなのよー」 「なるほどねえ、村長さんが村は退屈って言ってたの、なんとなく分かってきた気がするわ」 「人里離れた村だと、娯楽もそれなりに充実してて名物も多いのよー。ここの村は人間社会に近い生活を楽しめるのがウリだから、その辺は人間の街からイイとこどりしてるのよー」 「そのための資金は、街で働いて稼いでくる、と。普通に村を開放したら、逆に人間たちも遊びにきて潤うと思うのだけど、そうはいかないのでしょうねえ」 「残念ながら、すべてのクリーチャーが人間と仲良くなりたいわけじゃないのよー。人に興味を示す個体は多いけど、それ以上に踏み込みたいのは、どちらかといえば変わり者の部類なのよー」 「そうなのよー、だから、私たちはミクちゃんと一緒にいたい、とびっきりの変わり者なのよー」

さて、その頃のミクちゃんたちは――。 「いっただっきまーすっ」 「たくさん食べて、午後も頑張ってお片づけするのよー」 「大掃除の昼は、たいていラーメンに決まってるわよね」 「簡単に作れるし、手間もあんまりかからないのよー」 「その割にはメニューが豪勢だし……実家のお歳暮から点心セットもらってきたのが効いたかな？」 「杏仁豆腐の缶詰もあったのよー。いつものお昼がご馳走みたいに見えるのよー」 「さあて、掃除をさっさと終わらせてカフェ……と言いたいところだけど、今日臨時休業なんだって？」 「カフェの方で今朝、すごい気配を感じたのよー。タダモノじゃないのよー」 「えっ、お休みってそれが原因？」 「判らないのよー。でも、今はその気配は村の方角で感じるのよー」 「じゃあ、村にやってきたお客さんなのかな」 「そうかも知れないのよー」 「でも、私はまったくそういうの感じないのよー。気配を察しているのは澪たこさんだけなのよー」 「え、たこルカだから感じたってわけじゃないんだ」 「私はチカラそのものを普段使えなくしてるから、どうしてもその辺鈍くなってるのよー。でも、澪たこさんが感じるなら、それなりに能力あるクリーチャーはピンときてるはずなのよー。きっと、謎ちゃんもゾワゾワしてると思うのよー」 「なるほどねえ。そうそう、後でハリィちゃんのお店へお菓子買いに行ってこない？　やっぱりお茶の時間は大切よね？」 「働いたご褒美に、プリンも食べたいのよー」