銀匙町と空色町を連絡する巨大鉄橋上。現在、日本共和国自衛陸軍の第334戦車隊第１分隊により、閉鎖状況にある。 　鋼鉄の猛獣が身を伏せるその場に、明らかに場違いな様子の可憐な少女。何気ない様子で、猛獣を手懐ける「飼い主」の一人に声をかける。 ミク「こちらは異常ありませんか？」 砲手「あ、ミクちゃん！どもどもｗ　封鎖線の最後列は暇なもんだよ、うん。ここから前二つで大抵の奴らは追い返されちゃうし、さっきからあくびが止まらない状態さぁ」 ミク「真面目に」 砲手「ああっと、失礼しました！現状、第１・第２・第３封鎖線共々、異常なしであります！」 ミク「了解しました、ご苦労様です。これで、陸海空すべての閉鎖線が完成したわけですね」 砲手「保護対象の避難状況はどうなんです？」 ミク「総じて約2％の遅延が起こっているようですが、30分内外で保護率100％となるでしょう。そうなると、あとはもう地図を塗り替えるほどの攻撃をなさなけれは「八咫烏」は目的を達せられなくなります」 砲手「やりますかね、そこまで……？」 ミク「やるでしょう、その想いが本当なら。失ったものの代返を求める彼らに、それをやめろということは「死ね」と言っているのと同じこと。だから彼らはやり抜こうとするはず、目的を達したその時に代返が得られるものと信じて。 失われたものが取り戻されることなど有り得ない、その現実に目を背け耳を背け、ただ恨む心に翻弄されるままに虐殺を行う……滑稽で惨めだと思いません？」 砲手「あんたの綺麗な顔でそう言われるとこっちの背筋が凍っちまうよ」 ミク「あら、失礼いたしました」 通信「ミク、空色町に戻れ。問題が発生した」 ミク「了解しました。さて……休憩はおしまいですね。私は「内側」へ戻ります。皆さんはもう少しここで頑張っててくださいね」 　ハンドサインで応える砲手をニッコリと見つめ、直後、ミクの全身が強烈な光を放つ。 　光が収まったあと、ミクの体は露出の大きいレオタード状のものに変わり、その姿を堪能するまもなく一同の前から姿を消してしまった。