奈月「ねぇ、お父さん？なんでこの艦は名前が「つるぎ」なの？」 海斗「いきなりなんじゃらほい？」 美月「だって、他の艦は「まつかぜ」とか「ふがく」とか、気象や情景の名前が付けられてるでしょ？なんで、旗艦であるこの船だけ「つるぎ」なんて「具体的な」名前なのかなぁ、って」 海斗「なるほどね。少なからず疑問に思ったか」 葉月「何か理由があるのですか？」 海斗「俺はWKDの指揮官になる前、日本共和国自衛海軍の海将補に任ぜられた時期があったんだ」 奈月「あ、知ってる！確か防衛庁長官をぶん殴って3日で辞めちゃったって」 葉月「でも、それと関係が？」 海斗「自衛海軍の艦艇はどれも平均の低い、いうなれば「張り子のトラ」同然の存在だった。本気で自分たちの海を護ろうという意志などまるでない、おもちゃそのままの船だ。自衛海軍の性質上、相手から攻撃されるまでこちらから攻撃することは許されない、 戦闘においての最大セオリーである「先制攻撃」を放棄していながら、それを満足に果たす事もできない艦。そして、「それでいい」として本腰を入れようともしない司令部、お祭り気分でだらけ切った乗組員たち。剰え海の切り札である船に自分の孫の名前を付ける冒涜を平気で犯す防衛長官。 俺の愛した、自国を護るという誇りの元命を懸けて戦う覚悟の元集った帝国海軍の魂は、もうあそこにはない。帝国海軍は帝国の解散と同時に死んだのだ」 三人娘「……。」 海斗「この艦は陛下の私財により建造されたが、WKD指導に際し、全責任全権限を預かる意味で命名権をもらった。「つるぎ」と名付けたのは、この艦がいかなる敵とも敢然と戦う存在であることを、相手に示すため。そして、護るためには戦う事を恐れてはならないというメッセージを込めるためだ。 力無き防衛力は惨めな結果しか生み出さない。その行く先はより悲惨な結末だ。回避するためには、たとえ自らが反逆のそしりを受けようとも敵と戦い倒す覚悟を持ち続ける必要がある。陛下はそれを見越したために、WKDを自衛海軍から切り離された。我らは誰の後ろ盾もなく、陛下の命のもと敵を倒す尖兵とならねばならぬ。それが「つるぎ」の名の由来だ。 覚えておけ、そして胸に刻むがいい。我らはそういう存在なのだと。」