独特の雰囲気で知る人ぞ知る観光名所のエルフの里門前にあるクリーチャー商店街は、気軽にファンタジーな世界観を楽しめる穴場としてバカンスでひと夏逗留する人間もいるくらいですが、里と違って電気もガスも通っているので、どこかテーマパークのようです。 里の住民であるアルメリアがそこの一室を借り上げています。ここに住んでいるわけではなく、主に研究部屋として使用中です。 「まーた派手に散らかってるねえ」 「すみませーん、ニァサ様。定例のレア様とオルティス様への進捗報告が明日に迫っているので全然片付ける時間がなくて」 「まあ、あんたはそれでメシ食ってるんだから仕方ないね。部屋の整理整頓にかけてはイヨとモモはまだ全然戦力外だろうし」 「私もひとのこと言えませんけど、何でもおもちゃにして荒らし放題で……ちょっと、モモ！　勝手に倉庫に入っちゃだめって言ってるでしょ、お手洗いなら隣のドア！」 「れむルカに見張らせておくよ、危ないことやってたらすぐ引き止めさせるから」 「私におまかせですわあ」 「そうそう、ニァサ様。お土産のケーキもですけど、木馬どうもありがとうございます。ふたりともすっごく喜んで遊んでますわ」 「うちには結構在庫があるからね。引き取ってくれてありがたいくらいだよ、何ならもう一台持ってこようか？」 「在庫って……木馬作る趣味の方でもいたんですか？」 「趣味というよりも教育の一環かな。純正エルフの子供時代は玩具は与えるだけじゃなくて、小刀や道具の扱いを学ぶ意味も含めてなるべく自作させるのが兄上の方針でね、おかげで木工細工が倉庫にいろいろ眠っている。この木馬もかなりの年代物だ」 「６桁、下手したら７桁ですか」 「ま、そんなとこかね。しかし、イヨの装備もすごいね。アルメリアの手製かい？」 「ええ、この子こういうの大好きで、今日はレア様の館の勉強お休みなんで朝から張り切って装着してます」 「ふむ、放電だけじゃなく念動も使いこなしているようだし……どうやらモモとの能力差がはっきり出てきているようだ」 「あ、そういうのあるんですね。私は全然力ないから判んなくて」