エルフの里近くにある薬草園ではしとしとと雨が降りしきっていて、まったく止む気配がありません。 こんな日は作業はお休み。家で片付けをすませたら、お菓子を食べてごろごろするに限ります。 「そうはいっても、ユーク兄さまは研究所へ出かけていったけどね。室内なら仕事に影響ないし」 「あらあ、これでは今夜予定していた薬草園の花火の打ち上げは中止ですねえ」 「里と違って、ここは天候を操作することはないから仕方ないわね」 「アレクシス様とジャスティン様が落胆してましたよお。まあ、風属性の皆様の予測では天気が崩れることは薄々分かってましたけどお」 「天候の様子をみて開催日を調整するってさっき連絡があったわ。今夜のために下ごしらえ済みの食材は、まるごと時止庫に放り込んでおいたから決して無駄にはならないし。ここと違って里は好天で、さっそくみんなで裏手の湖へ繰り出して泳いだり、バーベキューやったりしてるらしいけど」 「あのお二方もこちらが延期になったので当然楽しく遊んでますよお。といっても、火を起こして肉を焼いて、ほとりで甲羅干しするくらいで泳ぐことはないんですけどお」 「火属性はたいていカナヅチだもの。火が溶けこんでいる温泉や、温められたお湯じゃなければ水浴びすらしたくないってユーク兄さまもおっしゃってたわ」 「ここはちゃんと温泉引いてあるから安心ですねえ」 「そう、だから楽しく引きこもっていられるの。買い物は通販もあるし、体を動かしたくなったら農作業頑張ればいいから」 「おやあ、今日はそういう気分じゃないんですかあ、クラン様」 「まあね。読んでしまいたい本がいくつかあるから、それをやっつけたら兄さまのところへ様子見に行こうかな」