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その時、囂々と燃え盛るその爆炎の中を突き破る様に「それ」がザッ・・・!と突き出される。

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その僅かな挙動の静止と逡巡。                                     「それ」がまずかった。                                       「それ」に気付き動こうとする彼女を背後から眩い光が包み、その次の瞬間―――――――

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紅い閃光を纏った「矢」が彼女を刺し貫いたッ!!

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対して少女の方は相変わらず何も変わらない、様に見えた。                        その顔は相変わらず無表情であり、その挙動も封じられてるとはいえ僅かな動揺も焦燥も微塵も無い、    かの様に見えた。

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爆炎の中から「少女」は猛然とその姿を現した。                             圧倒的な力を見せつけられようとも、叩き付けられながらも。                       その「命」は、その「闘志」は未だ尽きる事無く燃え盛っていた!

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「それ」は最初に相対した時から何とはなくだが感じていた事であった。                  この場にいた者達が常人―――いや”人ならざるモノ”であるのではという事を。               そしてその内の四人が得体の知れない「何か」であるという事を。                     今、こうして対峙している「彼女」は「それら」の中でも比較的「こちら」に近い存在ではある様なのだが、それでも今の自分とは比較にすらならない程に埒外の強さを持った「何か」である事に違いない。        現に今、自らの身を以て「それ」を少女は実感させられているのだから。

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「それ」は自身の身体に叩き付けられた!!

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考えるまでも無く「それ」は既に「少女」の心で定まっていた。

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異様なまでの眩暈や倦怠感という「変調」に襲われた「少女」は思わず朦朧としてしまう。          辛うじて気を張って何とか保ってはいるが、少しでも気を抜けばそのまま意識を失ってしまいそうになる。   この突如として起こった自身の「異変」を「少女」は全く理解出来ずにいた。                いや、最早そうした思考すらも及び切れぬ状態であったのだが。

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あの「戦闘傀儡」たちは操者であるペロリンの「糸」によって結ばれ、彼女の魔力を体内の魔導水晶に注ぐ事によってはじめて手足の如く動かす事が出来る。                              だがそれが断たれてしまうと先程「意図的」に寸断された時の「彼女」の様に物言わぬ、動かぬただの「人形」となってしまう。                                           しかも今の少女の「攻撃」によって体内の「糸」そのものを相当傷付けられてしまった。           自己回復にはそこまで掛からぬがやはり幾分かの時間を要する事になる。           

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「人間」がその「人生」において幾度も対峙する事になる「壁」。                     「それ」と向き合った時にこそその「人間」という「存在」の「真価」が問われる。             それぞれに正しい「答え」なんて存在しない。                              それぞれがそれぞれで導き出すもの。                                  「それ」が、「それ」こそがその「人間」にとっての「答え」なのだ。                   例えその先にどんな「結末」が待っているのだとしても。

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「少女」は駆ける。                                          ただ真っ直ぐに前へ、前へと駆け出す。                                 「少女」は駆ける。                                          自分の前に立ちはだかる強大なる「壁」を超える為に。

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無意識で思わず伸ばした両の手で触れた「それ」はとても強く、とても熱く、そしてとても……とてつもなく重いものであった。                                           僅かでも気を抜いてしまえばたちどころに腕も、体そのものをも圧し潰してしまいかねない程に。

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煌々と赤い光を放つ四筋の「弾幕」が真っ直ぐ「少女」目掛けて伸びていく。                だが「少女」は全く避けようともせず、躱す事すらもしなかった。

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昼間に「星々」が見えぬのは「この星」に最も近いあの燃え滾る「焔の星」の強い光によって遮られているからに他ならない。                                            だが今「少女」の頭上には遍く「星」が散らばり色彩鮮やかにこの白き曇天の廃墟を照らす。         しかし「それら」は「彼女」が創り出した「贋物」の「星」。                       その数多の偽りの輝きは瞬く間に「少女」に向かって集約し―――――

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――――が、気付いた時には少女はいつの間にかセイバーの横を駆け抜けていた。              それを寸分漏らさず見ていた筈のくるみ達の思考が追い付くよりも速くに。

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「そう」指摘されても「少女」に聊かも変化は見られなかった。                      そもそも彼女の言っている事を理解出来ているのかすら分からなかった。                  「暖簾に腕押し」という言葉ががあるが、文字通りリアクションに対する反応が全く返って来ない。      それがまるで自分が「糸」によって操っている「人形」と同じ様に彼女には見えた。

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何故なら――――――

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誰にでも「これだけ」は絶対に譲れないというものがある。                        地位、名誉、財産、家族、恋人、思想信念、矜持―――――人によって様々なものが、理由が。        そして「それ」は「彼女達」にも「あった」のだ。

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「糸」を斬られ、脆くも崩れゆくセイバーを一瞥する少女。                        だが「それ」にばかり気を取られてる訳にはいかなかった。

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