メーエリアの裏事情に精通しており、情報を切り売りすることで「みなしごハウス」の子供たちを養っている。ルークの育ての親でもある。街のゴロツキや身よりのない子供たちを使って、あくどい商売をしているという噂もあるが……？

九死に一生活ぱん巻き キュウリの中身は九割水分 見た目は古い月と瓜二つ しかしキュウリの居場所は自分を細かく切り売りして載せられる冷たい皿だ 仲間のキャベツは自分の姿を脱ぎ捨てていくが最後の最後に芯だ キュウリの夢ふかふかで心地よい畑の土から世に出されても できればぬるま湯のようなぬかるみでぬくぬく暮らしていきたい ある日キュウリは急に思い立ち自分を高級に扱ってくれる国へ旅立ち。あてもなく見知らぬ異国の地をうろうろ。故郷と同じ左車線なので交通事故の心配はなさそう。通りがかった果実酒工場に咲いていた小さな花がなんとなく気になってうっかり見とれて交差点に飛び出してしまったその瞬間！ 運悪く北からパンの運搬車が飛び出してきたので逃げようとしたら南からもパンを運ぶバンきてはさまれた！　東に逃げようとしたが調味料を運ぶ車も狭い道から迫ってくる！　そしてまとめて西の果実酒工場のお酢倉庫に押し込まれてしまった。 ――ふかふかのパンにはさまれて、塩と胡椒とバターと適量のマヨネーズにまみれて、キュウリは自分の身が急患になったように意識がもうろうとしていた。そんな夢うつつの中なんとなく思い出す。キュウリが油断した小さな花は木瓜の花だった。 ｛注釈：昔イギリスではキュウリは高級だったらしい｝ ――散々な目に合う三十三回。「飛び出すな車はキュウリ止まれない」