直人「……では、如月は双子を宿していた、と？」 海斗「ああ。ただでさえ小さな体格で、体内容積に余裕がないというのに、双子が授かっちまうなんてな。だが、それだけが問題じゃない。もっと根本的な、そして不可解かつ深刻な事態が起こっている」 博士「不可解かつ深刻？」 海斗「この胎児の成長速度が異常に早いんだ。このままだと計算上4時間後には如月の身体を破壊するまでにね」 博士＆直人「「？！」」 海斗「大急ぎで胎児を取り出す術式を進めているが、正直助けられるかどうかはかなり微妙だ。一人か、二人ともか、あるいは全員かも知れない。覚悟を強いられる瞬間は嫌というほど経験しているが……今ほど堪えるものはないな」 博士「大伯父……」 海斗「皮肉なもんだ。戦場で何度も死に損なってるくせにな」 博士＆直人「……」 ???「貴方が今を生きるのにはれっきとした理由があります。人は誰もその理由からは逃げられない」 直人「?!誰だ!!!」 ???「なればこそ貴方は前を向くべきです。貴方のもとに集う人々を一人零さず未来へと連れてゆくためにも」 つんっ　びったんっ ???「きゃんっ」 博士「何やってるんだよ、紫さん。大丈夫？」 紫　「あはは、恥ずかしいところを見せてしまいましたわ」 海斗「八雲紫、「幻想」側の最高責任者か。甥子と知り合いだったとは驚きだが、このような所に何用で？」 紫　「いえ、救いを求める声が聞こえてきたもので。いかがでしょう、貴方の抱えるこの問題、私に預けてみません事？」 海斗「何？」 紫　「私なら、あの子達を誰一人欠ける事無く救うことが出来る。貴方が多少の犠牲を払うならばその先も保証できるわ。いかがかしら」 海斗「犠牲とは？」 紫　「「時間」よ。あの子達を救うことはできるけれど、おそらく子育てにおいて最も大きな喜びの時間は諦めなければならない。それでよければ、私に任せて欲しい」 博士「大伯父、紫さんは信用できます、だから」 海斗「……わかった。如月たちの命、あんたに託す」