「人」で在れ、或いは「物」であれ、何かしらの「意思」か「作用」か、或いは「運命」によって互いに引き寄せられ、結ばれるというものはあるのだと思う。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「身体に馴染む」「手にしっくりと来る」「まるで一体である様に」――――様々な表現があるが「そうして」結び付いた存在同士の「絆」は「血縁」や「婚姻」「主従」の「それ」を超えた強い「繋がり」は時として「世界」に、「歴史」に「伝説」となって後世へと刻まれていく。

そう、この少女と―――――

「彼女」を除いては。

「アレ」は元々逆神討滅を目論んだ「ポリ組」によって引き起こされたもの。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そして現地にこそ赴く事は無かったが彼女も間接的にではあるが技術支援という形で多少なりと「関与」をしていた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当然、彼女は当時「あの時」の事をモニター越しを通じしっかりと「それ」を視ていた。

ミ：「・・・・・・・・」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　▶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　直後、少女は目線をそれまで向いていたドライバーから放し、少し視線を上方に、そしてやや斜め右に向く様に首を傾けた。

少女は語る。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「過去（むかし）」、そして「現代（いま）」もこの「世界」を蝕む「負の連鎖」を。

人は「衣」「食」「住」を得て「礼節」を足るという。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そしてその「どれか」が欠けると「別なもの」で補完しようとして段々と人は「歪み」だしていく。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ならばそれら「総て」が「無くなってしまった」場合、人は「どうなる」か？

ある者は戦災に追われ、ある者は貧困から逃れる為に、ある者は己の夢を実現する為に。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それぞれ「理由」は様々だが、「今の場所」を離れてまで「新たな世界（NewFrontier）」でリスタートしようとする者達はこの国にも、そして海を越えた大陸に於いても多く存在する。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だが、そうまでして渡った先で「夢」を叶え、「幸福」を享受できる者はほんの一握りに過ぎない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　殆どの者は冷酷な「現実」というものに押し潰され、失意と落胆に打ちのめされてしまうのが悲しいかな常なのである。

「それ」は必ずしも「遺伝確立250憶分の１」の「異能生存体」に限った事では無い。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　持って生まれた「資質」を伸ばし、与えられた「環境」に適合し、「そこ」から更に「それら」をも己の望む様に「変化」させていくというのは「人」という「この世界」における「異形」に備わった「異能」なのである。

どれだけ「出来る者」と言えども「限度」というものは存在する。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そもそも体と脳が一つしか無いのに「アレ」も「コレ」もというのは土台無茶な話なのである。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　随分昔にはそうやって無茶した挙句に最後は自身の「星（いのち）」を「五丈原」に墜としたとある「天才軍政者」もいたのだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「人は石垣。人は城」という古い言葉にもある様にやはり「手駒」は一つででも多く持っているに超した事は無いと彼女は理解していた。

そんな怒りを剥き出した逆神に対しミユキはすかさず彼女を「恫喝」する。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その表情からは先程までの「冷笑」を消え、さりとて「動揺」も「怒気」も浮かんでおらず、ただ有無すら言わさぬ只ならぬ「威圧感」が静かに、だが強く発せられていた。

そう、幾重もの魔法陣や結界で覆われたこの場は既に「彼女」の「支配領域」。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この場に居る総ての者達は「立場」や「力量」、「才能」の垣根を越えて「彼女」に「支配」される「虜囚」たる身でしかなかった。

この場に於いては己の「力」で無力な存在でしか無いのは彼女も分かっている。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いや、だからこそその無力さを噛み締めさせんと彼女は目の前の存在をあからさまに詰り倒そうとする。

そうして口を開いた彼女から発せられたのは少女の「認識」を、「思い」を「全否定」するが如きその「一言」だった。

そう少女を問い詰めるゆっきーの「それ」は最早自身の「生徒」に対して向けてのものでは無い。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　自身と他の生徒達、何より自身が仕える「主」と「組織」を「脅かすもの」に向けての「それ」であった。