妖霊。 　　…それは、人と共に在る、人ならざるものたち。　 　【命鬼（めいき）】 　　自身が望む財物を生み出すことができる不老の美鬼。 　　その能力は、未だ子を成さぬ人間が「自身が繋ぐはずの命」と引き換えに鬼と化して手に入れたもの。 　　故に命鬼達は生殖を行わない一代限りの存在である。 　　命鬼は絢爛豪華な館に住み、金銀の調度品や贅沢を尽くした宴席で客人をもてなし、 　　自分達と同族になるよう誘いかける。 　　自身の存在や所業を悪だとは思わず、仲間達と共に終わりなき享楽的な日々を謳歌する者や、 　　後ろめたさから逃れ自らを正当化するため、執拗に人間を勧誘する者などがいる。 　　月日を重ねる中で、欲に目がくらみ子孫の未来を摘み取ったことに自責と後悔の念に苛まれる者もおり、 　　その罪に耐えかねた命鬼達の終焉の地は、いつしか「鬼亡山（鬼泣山）」と呼ばれるようになったという。 　　※本作の「妖霊（ようれい）」は、作者が現世で見聞した実話や怪異譚などから着想を得たものです。 　　※画像は妖霊の想像図です。制作にあたり、カパエル式モデル（磐境萌）をお借りしています。 　　　（Quappa-el様のモデル配布サイト→https://www.quappael.com/） 　　「妖霊ノ國」シリーズ　→clip/3300338 　　　追記：広告ありがとうございます。

　沈む。沈んでいく。彼女は暗い暗い嫉妬の底へと沈んでいく。望んでか 望まずか―――　1日1パル48作品目です。橋姫伝説に則れば、愛した夫に裏切られ、嫉妬に塗れた鬼と化したパルスィ。復讐を遂げた彼女に、後悔の念はあったのでしょうか。それとも自ら望んで嫉妬で溢れた世界に閉じこもっていったのでしょうか。今となっては、誰にもわかりません。　パルスィかわいい。47←im5480970　im5480985→49　まとめ：clip/1540708　

「だから、さようなら」「えっ？」 消え入りそうな声が脳内で響く。 「ちょっと、どうしたのよ。さっさとトレーニング始めるわよ」 目の前には長いツインテールのウマ娘が立っていた。その娘が走り出した瞬間にタイマーを押す。その娘のフォームは綺麗でお手本のような走りだ。だが、しっくりこない。 「ねえ、今日のアンタおかしかったわよ。何かあったの？」「俺の担当って『誰』なんだ？」 「はぁ？アンタそれ本気で言ってるの？」 「アンタは、■■■■■■■■■のトレーナーでしょ」 「えっ？」 ノイズで名前の部分だけ聞こえなかったが確信したことがあった。身に着けている物、全てを確認する。何も書かれていないメッセージカードを1枚見つける。カードの表面を触ってみる。強い筆圧で描かれたのか、細い跡が残っていることに気づく。その跡を指でなぞっていくと ——ずーっととっておいてくださいね。 「ごめん、行かないと」 自分は走り出していた。行先はあの海辺。波の音だけがやけに響いている。 「マーチャン！」 仰向けに倒れている彼女に駆け寄り上体を抱える。後悔の念に押しつぶされ、彼女の身体をギュッと抱きしめる。 「痛いですトレーナーさん…」「…ごめん」 「それは何に…対してですか？」「…キミを途中まで、忘れてしまっていた」 「…どうして思い出すことが出来たんですか？」「キミがくれたメッセージカード。あれのおかげだよ」 「作った甲斐がありました」 海の方から高い波がこちらに向かってくる今から離れようとしても飲み込まれるだろう。それならばと、彼女の手を握る。今度は離ればなれにならないようにと。 「トレーナーさん」「なに？」 「名前、呼んでください」「アストンマーチャン」 「はい。あなたの、アストンマーチャンです」 二人の身体は波に飲み込まれる。彼女を手放さない。その一心で抱きしめる。気づけば自分の右手が彼女の左手を握っている状態になっていた。 いやだ。そう思った瞬間、手が離れた。 ----- 全文（4790字）はpixivで https://www.pixiv.net/artworks/107483343