三人兄弟の次男として生を受け、元々は画家を目指していたはずがなんの因果か海軍志望。 　士官候補生時代はいわゆる「悪ガキ」であり、指導役もかなり頭を悩ませたという。 　我が強く喧嘩腰、間違ってることには上司にも食らいつく（たまに殴る）過激さの一方で、他人以上に自分に厳しく常に工夫と努力を怠らない人柄から、多くの人々に好かれていた。その辺が、自分をぶん殴った板倉に恩赦を与え、後に彼の手土産のブランデーの瓶を死に際するまで手放さなかった当時の「最上」艦長、鮫島具重大佐のエピソードに現れている。 　彼が乗り継いだ艦は時系列順に扶桑、最上、青葉、伊68（のちの伊168）、加賀、そして如月。如月以降は本格的に潜水艦乗りとして手腕を発揮し、派手さはないが必ず生還することで高い信頼を得た。 　……実は如月での航海長時代に、座礁事故を起こしているらしい。すぐに復帰したから良かったようなものの、意外に抜けてるところもあったりする。 　また太平洋戦争末期あたり、特式内火艇「カツ」を使った「竜巻作戦」の実行を命じられるが、「カツ」が使い物にならないと上層部に食って掛かり大目玉を食らっている。 　この後、人間魚雷「回天」部隊の育成を受け持つことになり、山口県徳山市（現・周南市）の大津島突撃隊司令を拝命。多くの若者を教育しながら自身も回天による出撃を熱望したがついに叶わず、終戦を迎える。終戦時は自決すら覚悟したが、説得されて回天隊の戦後処理に当たった。 「一度死を本気で決心した後、生の喜びを味わい、『生きていることの本当の意味』が解った者に、再び死の覚悟をさせるのはあまりにも残酷すぎる」　その当時の彼を象徴する言葉である。 　戦後は海上自衛隊幕僚技術部、三菱重工業神戸造船所勤務。また1963年（昭和38年）4月、海上自衛隊潜水艦「はやしお」の深々度公試で操艦を指揮し、かつての「不死身の男」の健在ぶりを見せていたようだ。 　幾度となく死線をくぐり（場合によっては味方からの切腹命令もあった）、その度に生き抜いてきた不死身の男も時の流れには勝てず、2005（平成17年）10/24、永眠。晩年、人の判別もできぬほど弱っていたらしいが、それでも夫人の顔だけは忘れなかったという。

2020年、4月23日。 第四次深海大戦から約３ヶ月。戦後処理も落ち着いてきた。 艦娘の存在意義であった深海棲艦の脅威も無くなったことで、我が呉鎮守府所属の艦娘の半数は退役。残りは横須賀の大和が設立した独立組織に異動となった。 横須賀鎮守府を残し、他の鎮守府は全て解体。俺の居場所が無くなったが、横鎮の沖田大将の計らいで大和の組織に指揮官として異動することになる。 荷物は片付けられ、執務室には何もない。 他の艦娘は既に退去している中、最後まで残っていた電。 着任したての頃を思い出したのか、あの頃と同じ位置で同じ姿勢で……だが、あの笑顔はもう思い出せずに、言葉を綴った。 「電、本日を以て退役します。ありがとうございました、司令官。 　……次に戦場で出会った時、できれば貴方に銃口を向けていないことを祈りたいです」 駆逐艦 電。現在はBIG電と呼ばれる彼女は海軍を辞め、傭兵となった。 少女は変わった。2016年初頭、大本営の指示のもと行った単独任務作戦“バーチャスミッション”と“プラズマイーター作戦”を遂行してから。 性格も口調も、初めて出会った頃とは全く変化していた。何が少女を変えたのか、それはほんのひと握りの人間しか知りえない。 後に彼女は武装要塞国家『アウターヘブン』を指揮することになり、世界を敵に回した艦娘として歴史に残る。 ＜７年前→im7082098＞ ＜お借りしたもの＞（敬称略） 電：エボシ 眼帯：ゆきち 公開用鎮守府内装：銀匙P HgSAO：針金P 自己オーバーレイ合成フィルタ：おたもん AutoLuminous4：そぼろ ExcellentShadow：そぼろ MikuMikuEffect：舞力介入P