中国の武術は大別すると八極拳に代表される剛猛な武術と、太極拳のような柔和な武術の二種類が存在します。八卦掌は太極拳と同じく柔軟な姿勢の武術であり、化勁（攻撃をそらす技術）を用いる武術の到達点とも言われています。 　最大の特徴は相手に対し側面を見せて構えることで、基本的に正対せず相手の周囲をぐるりと回るように位置取ります。常に定円を描くため、複数人で一人を包囲してぐるぐる回るということもあったり。 　言うまでもなくこの構えは先制攻撃には向かず、基本的に相手の技を受けることを前提にしたものであると言えます。その後のやり取りの中で間髪なく先手を取り、隙を突いて攻撃し相手を制することが八卦掌の極意と言えるのかもしれません。 　八卦掌は歩法も独特であり、基本的に足運びは泥濘の中を歩くように摺足で行います。これは体捌きの鍛錬にも直結するものであり、体の開き変えや相手との間合いの調節など、八卦掌における最重要項目に影響する部分であるため、歩法の鍛錬は特に念入りに行います。初心者は最低２年はみっちりこれを行うそうです＾＾； 　八卦掌の戦闘では攻撃と回避がほぼ同時動作で行われるのも特徴の一つです。相手との位置関係にもよりますが、その攻撃の先をとって技を返したり、身をかわした置き土産に一撃を入れたりと、一発の大きさよりも着実な打撃を重視しているのも特徴の一つでしょう。相手が焦れて大技を出してきたならば、こちらも大技で返すチャンス。 　八卦掌の基本動作では構えながら相手の周囲をグルグルと回るのですが、この動きは自然界のちからの法則を表していると言われています。もともと八卦掌そのものの名前が易経の八卦思想で説明していると言われており、動作自体も自然の定理を説明したものとされています（ただしそれらの理論は当然後世に構築されたもので、成立当初には無かったと考えたほうがいいでしょう） 　西洋での格闘が重視するのは重量と速度ですが、これは自分の肉体で取り出される単体の力のことを意味しています。中国武術で重視するのは同じ重量と速度でも意味合いが違い、自然界の中から取り出される力のことを意味します。 　即ち、自然が備えている力を借りて戦うための技術。その集大成が中国武術であり、最たるものが八卦掌であると言えるのです。

私は雷天大壮のことを「震雷の衣玖と乾天の天子は大いに壮んになった結果、紫に退治される」と覚えました。