「ちょっと待ちなさい！」 黒い力と力の激突、その決着からほどなくして空から降りてきた謎の光。敗北したアヅチを抱えたバンギラスと、彼のパートナーをボールに回収したキナコは、その光を確認すると何一つ思うことなく足を進めた。 彼女らを呼び止めたのは、まるで今の戦いにはアヅチとキナコ以外には何も介入するものなどなかったとでもいうようなその態度と、自分達を助けたアヅチを連れていこうとすることへの抗議の意を呈したアカリだ。 波動の支配から解放された妹のユウカは今、アカリの胸にすがりつき泣いている。余計な手出しをして逆に実の姉に刃を向けることになったことをへのひどい自責にかられ、何度も謝っていた。 鬱陶しそうに振り返るキナコに、ひるむことなくアカリは続ける。 「そいつ…アヅチは嫌がってたの、その布を使った実験だとかそういうこと。詳しくは聞いてないけど、さっきのを見ればアヅチの態度も十分納得がいく。そんなやばい力に手を出させてアヅチをどうするつもりなの！？」 まだ出会ってからさしたる交流も無かった。それでもたった今巻き込まれてしまった自分達を決死の思いで助けてくれた事実をアカリは重く受け止めている。とても易々と連れていかせる気にはなれなかった。 しかし、もとよりキナコの眼中にアヅチ以外の目標は一切なく、アカリの言葉など届くはずもない。 「部外者には関係ねぇなぁ。こいつは私の部下でそれを回収しに来たってだけだ。」 そうして踵を返し、まだ何か言いたげなアカリに向けて一言残し、光の中へと消えていった。 「てめぇらはせいぜい『未曽有の大災害で世界が滅んだり』しねぇようお祈りでもしてるんだな。」 ■次【im5061482】