親も無し、家も無し、金も無し、コネも無し。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな無い無い尽くしの者が成り上がるにはそれは並々ならぬ「努力」と「才能」、何より「豪運」が無ければならない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かの「豊臣秀吉」や「田中角栄」が最底辺から国の頂点に成り上がったのもそうしたモノが備わっていたからに他ならない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな彼らの様なサクセスストーリーを野心に持つ者にとって最大の障害と成り得るのは家柄や権威を笠に着る「上級国民」などでは無く、持って生まれた類まれなる「恩恵（ギフト）」に加え、何物にも縛られず自由奔放に天衣無縫を貫く。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　正に我が道を爆走するどこぞの「第六天魔王」の様な「超KY野郎」なのである。

それはここまでの事をつぶさに見てきたなつき自身も感じてはいた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彼女も相当にこれまで「やってきた」ものだがミユキの「それ」は軽く上回るもので、その事については素直に彼女も認めざる得なかった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しかし、それを徹底させる為には如何なる事も犠牲にするだけの「覚悟」が無ければならない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「それ」が例え自分にとっての掛け替えの無いものであったとしても、「自分の心」を「●して」でも成し遂げるという「覚悟」が。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だがミユキはそこまでにはどうしても非情に徹し切る事が出来なかった。