長門「……前方の艦隊、戦闘態勢を解き回頭、撤退していきます」 ル級「念のためこのまま観測体制を維持、戦闘警戒レベルを引き下げます」 如月「どうやら、戦闘は回避できそうですね」 海斗「陛下に連絡を取ってくれた睦月のお手柄だな」 海斗「だが……陛下のお言葉とは言え、銀千代には大きな借りを作ってしまったな。近いうちに旨い酒でもおごってやらなければ」 港湾「……カイト」 カイト「？リリア、どうかしたかい？」 リリア「カイトには、感謝シテル。今度も、救ってクレタ。でも、私たちのタメニこういうことスルノ、もう止めたほうがいい。危険」 海斗「そうは言っても、陛下の令ならば従うしかないよ。それに、これは「お互い様」でもある。ただ単に助けるために動いているわけじゃないんだ」 リリア「？」 海斗「みんな、まずは戦闘が避けられたことを喜ぼう。そしてご苦労だった。しかし、ここで皆に改めて心に刻んで欲しいことがある。今回の我々の行動、その本当の意味をだ。 　我々は今回、不当な攻撃を受けつつある深海棲生物を守護せよという陛下の勅命により、この事態に直面した。それは、無差別に深海棲生物を守護せよという意味では決してない。この海域に住む彼らには攻撃を受けるいわれはない、だから守れということだ。 　もし彼らが人に対し攻撃手系な姿勢を示し、実際に人を傷つけたり脅かしたりするならば、その時は勅命を持って我々自身の手で彼らを葬ることも辞さない、ということだ。我々は固有の存在の味方ではない、平和と調和のもと懸命に生きる人々の守護者であるということを、忘れてはならない。 　これはここにいるリリヤ……私と如月を「彼岸の海」から救い出してくれたマリアナ族の深海棲生物にも同様に言えることだ。その事を今一度、各員の頭の中に叩き込んでくれ。 　場合によっては死すらも覚悟してもらなければならない状況もあるだろう。だが、この戦舟「つるぎ」に乗り込んだ諸君はその覚悟をも超えた意志の元、能力を発揮してくれると信じている。万一の時は……諸君の命を俺にくれ。俺の命もお前たちに与えよう。 　以上だ。では、本艦はこれより当初の予定通りバリ島沖合のコロニーへ向け出発する」