タイキックは痛い ーーーー 　……ええっと。俺、アウトだって？ 　ふいに気配を感じ後ろを振り向くと、軍服を着た銀行強盗のような黒い目出し帽をかぶった男がウレタン製っぽい棒をもって立っていた。これは、まさか。 「な、なんのドッキリだこれは！？」 「……」 　男は無言のまま俺の後ろに回り込み、ケツを 　ばしーん！　と叩いた。 「うぐおっふ、いてえ！！」 　黒タイツの男は、俺のケツを叩いて仕事を終えたのか、虚空に空いた穴に消えていった。 　くそう、眠かったのが目が覚めてしまった。 「な、何なんだ一体……！！」 「うぐぐ、なによ、ガチャモンスターが喋るとか聞いてないわよ！……あ、ニンゲンか。そりゃ喋るかしら」 「え、そこ普通に続けるの？　え、仕込み？　仕込みなの？」 　なんだこいつ。そしてここは一体どこなんだ。 「な、なあ、俺帰りたいんだけど？」 「こほん。えーっと、私は召喚者よ、おとなしく言うこと聞かないとだめよ？」 「……パパやママ、もしくはＡＤとかそういうのはいるかな？　俺、帰りたいんだけど」 「そう、それは残念だったわね！　私はダンジョンコアで、あなたはダンジョンマスターとしてこのダンジョンを危機から救わないといけないのよ！　……あれ？」 　ダンジョンコア……ダンジョンマスター？ 『お知らせです。増田桂馬をダンジョンマスターに設定しました。とりあえず目の前の幼女のことはロクコとお呼びください。以後、ロクコも参加者となります』 「え、ロクコ？」 「……な、なんでこいつがダンジョンマスターに！？　え、ロクコ？　私の名前？　なんか急じゃない？　よくわからないけど」 『巻きです』 「巻きか……なら、しかた、ない？」 「お、おう。そうね？」 　とりあえず納得することにした。