遠く離れた異国の地・エルフの里でも夏祭りが開かれています。 この季節、里の日没はもっと遅いのですが、レア様の結界の中では夜祭りのために早めに夕日が沈み、妖狐のヤコさんの神社には提灯がともされ、さまざまな屋台が並んでとてもにぎやかです。 「わあ、焼きとうもろこしおいしそう！」 「へへっ、兄ちゃんが腕によりをかけて作ってるからな。他にも焼き鳥や焼きとん、特別に取り寄せたイカの姿焼きもタレがすっげえうまいんだ」 「まあ、白緑もついに働き始めましたの？」 「……これで訊かれたの何人目ですかね？　里帰りなさっているエルダ様はともかく、レティシア様まで大げさな態度を見せることはないでしょうに」 「すっかり里の風物詩よね、白緑が夜店で売ってるだけでネタ扱いされるの。実際は役目を持っていない住民の徴用だけど」 「いやあ、お祭りって最高に楽しいよね。屋台をのぞくだけでわくわくしてくるし、美味しいものたくさん売ってるし」 「外の世界から通販した、ぴかぴか光るコップ？　も面白いねえ。果実の砂糖煮を炭酸で割ったいつもの飲み物が全然違って見えるよ」 「でもさあ、鍾季も準備大変だったよねえ。浴衣みんなの分揃えたんだろ？」 「着付けはヤコにも協力してもらったし、織り上げた生地を意匠を考えながら染めて帯や浴衣に仕立てるのは楽しい苦労だったから全然かまわないよ。それと、盆踊り会場での演目に出る者たちは装束を和風に統一するよう、ヤコから要請があってさ」 「そのおかげで、私もこんな格好させられておるがな」 「オルティス兄ちゃん良く似合ってるじゃん。みんなであれこれ検討したかいがあったよ」 「ヤコに懇願されて社務所に出向いてみればクァエルとアレクシスと、ついでヤコまでがにやにやしながら待ち構えているわ、これを着ろだのあれを羽織れだの、果ては装飾品やら髪飾りなどじゃらじゃら積み上げて私を着せ替え人形にしおって。さては以前からたくらんでいたな？」 「えー、兄様もお祭り楽しんでいるみたいからいいじゃないの」 「演目が始まる前に腹ごしらえは必要だからな」 浴衣テクスチャ：千様　https://www.pixiv.net/member.php?id=14936402