紅い悪夢から、どれだけの時間が経ったのだろう? 　あっという間に流れ去った苦しみの連続から、愛しい人の帰還を経て手に入れた平穏。 　だが、奈月の心は晴れない。 　すぐ隣にいる、大切な人の温もりが、それまで以上に遠く感じてしまう。 　あれほど、求め続けたのに…… 　募る不安を悟られまいと、彼を避けるようになる奈月。 　だが、それが長く続くはずもなく、容易く捕らえられてしまう。 「奈月は、僕の事を嫌いになっちゃった?」 「そんな事ない!大好きだよ!大好きだけど……怖いの……」 　それは、「大好き」という言葉の意味が変わっている事の証明。 　より大きく、深く、愛しい物へと変化したことを意味していた。 　父も、母も辿った変換、その入り口に立ったことを、奈月は知る。 「怖いの、もう一度失う事になったらどうしよう、同じ想いを貴方にもさせる事になったらどうしよう……大きくなっていって、止められないの……」 「でも、僕たちは前に進まなきゃ。立ち止まってしまったら、それこそ死んでいるのと同じことになってしまうのだから」 　身体全体で押さえつけられる、もう逃げ場はない。 「とにかく、もう逃がさないから。何が何でも、君を僕に繋ぎ止める。いいね、奈月?」 　異論など、あるはずもなかった。

【応募者】秋宮棗 【アバター説明】スペルは「Primrose Leukocyte」。プリムローズの名前の通り薄黄色の半透過装甲に身を包んだF型アバターで、黄のレギオン所属のバーストリンカー。アバターネーム後半の「ルーカサイト」は白血球の意味。幼少時に白血病を患っていたが、その苦しみを周囲の人間が誰も親身になって理解してくれなかった事がトラウマになっており、「自分以外にも己と同じ苦痛を与えてやりたい」と言う願望を持っている。そのため、自由に空を飛ぶハルユキには羨望と憎悪が混ざった暗い感情を抱いている。 【能力】両手から微細な菌状の寄生属性オブジェクトを生成する能力を持ち、掌を接触させた対象に侵入させ、相手を文字通り「白血病」の様な状態に追い込んでゆく戦法を取る。菌を寄生させた当初は僅かずつHPを削る位しか効果が無いが、時間の経過と共にHPの減少スピードは上がり、同時に全身に激痛が走ったり眩暈を覚えたりと加速度的に状態は悪化していく。更に、この能力には対象のバッドステータスや寄生属性オブジェクトを「病原体」と見做し、「白血球」の如く排除する『浄化』としての使い方もある。技の発動対象はエネミーを含むが、凶悪かつ強力な能力と引き換えに装甲強度はかなり低い。

そこは、「敵」であると覚悟したはずの場所。 「敵」として対立していたはずの男が率いる、皇国の剣。 許されたとは思えない、許されるべきではない自分が、その中にいる事の違和感。 だが、それとてもその存在には大きな意味を持たないのであろう。 かつて激しく憎んだ、美しき先人。 最後の戦いの中で気づいた、憎しみの裏返しの心。 慕うからこそ憎み、それ故に追い続けた姿が、目の前にある。 そしてその事実を、真っ直ぐに享受できる自分がここにいる……。 これまでのすべてが、報いのない苦しみだった。 だがその中でも、ささやかな喜びは確かにあった。 これから刻む世界を、苦しみの続きにするのか否かは、 これからの自分次第…… LRW様のすいまじ外伝　「祭りの余韻」http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6807256　のすぐ後のエピソードです。 これ以降、不知火はWKDに参加し、追って彼女の姉妹である陽炎と黒潮も合流することになります。この二人がどうなっていたのかは「祭りの余韻」にて。

私は信じる。全ての人が微笑みあえる優しい時代が来ることを。 私は信じる。全ての苦しみが憎しみに変わる、そんな仕組みが断ち切られることを。 どれほど声を枯らして叫んでも、どれだけちぎれるほど手を振っても、 伝えたい想いはコレばかりも伝えられないけれど 「少し」の積み重ねがいつか「意味」を持ち、伝わっていくんだと 私は信じる。 貴方も信じて。 その行く手にある未来は、傷つけられるだけのものではないということを……。