私は一人段々畑や山道を散策する。　 　紅葉はまだだけど、山は人が少ないし、涼しくて気持ちいい。アオザイじゃ少し肌寒いからカーデを羽織る。 「ん、みゃ！」 　白い彼岸花に気を取られて転ける。反動でサンバイザーが山道を転がり、柵の隙間から崖に落ちて見失ってしまった。 「…」 　崖は尖った枝だらけで取りに下りるには危ないし、百均で買ったものだけどお気に入りだし、どうしよう。 　どうするか迷い、とりあえず白い彼岸花をスマホで撮影し、崖を覗き込んで探しに行こうとしたら「ねえ」後ろから声をかけられた。 「みゃ！？」 「これあんたの？」 　緑の馬のお姉さんだ。深緑の長いたてがみと尻尾が風でサラサラなびいていてでかっこいいなぁ。 「あ、ありがとう」 「もう落としたものはないのね？」 「うん」 　わざわざ草むらから取ってくれたのか、馬のお姉さんの首や尻尾にはくっつき虫がたくさんくっついている。申し訳ないなぁ。 「お姉さん、すみません。くっつき虫が付いてますよ」 「ああ、ありがとうね。リューマでいいよ」　 「あ、私は緑晶 美銅羅です。リューマさんのたてがみかっこいいですね。綺麗な深緑だし」 長くてサラサラのたてがみは触り心地いい。くっつき虫を取るついでにさりげなく触っておくか。 「ミドラちゃんのパステルグリーンの毛並みも綺麗じゃない。アオザイも綺麗だし」