チノ/10歳くらい。性質は純潔。 とある少数民族の村では皆空腹だった。いつからか狩場に大きなチーターが住み着いてしまったのだ。村の呪術師は生贄を捧げなければ村は滅びてしまうという。チノの親友で身寄りの無い少女サヤが選ばれるが、チノは納得できない。夜、獣の巣穴に男たちが生贄の箱を運び込む。匂いに気付き近づく獣。箱から飛び出してきたのは武装したチノだった。 チノは必死に戦うが、まだらの悪魔に敵うはずも無く死の淵にいた。 「こんなのやだな…わたしにもっと力があれば…この獣よりも強い力が」 そのときあの声がささやく。 「ボクと契約して魔法少女になってよ！」 サヤに事情を聞いた男たちは巣穴へ。彼らが見たのは人ならざる動きで獣を八つ裂きにするチノの姿だった。血だるまとなり息絶える野獣。喉笛を食いちぎり、咆哮する少女。 「な、なんなんやあれ…まるでチーターやないか！」 魔法少女となって村を救ったチノだったが、そこに帰る場所はなかった。 数週間後、小さな空港に牧師のような小男が降り立つ。 「大丈夫ですかい？相手は相当手強いですよ」 ガイドの説明によると、最近このあたりで悪魔が家畜を襲っているという。 「報酬を用意して待ってな」 背後の荒い息遣いに身を翻すエクソシスト。コートの下は血の色の真っ赤なローブを着た…少女だ。身の丈ほどもある長槍を軽やかにさばいてみせる。 戦いは互角に見えたが、少女の経験値のほうがまさっていた。多節棍となった槍に巻き取られた悪魔を少女が踏みつける。 「おい、なんだよ！こいつは魔女なんかじゃねぇ…魔法少女じゃねえか！クソッ、ジェムがこんなに曇ってやがる…」 手持ちのグリフシードを取り出すと魔法少女のソウルジェムを浄化する杏子。 「おなかが…すいた」 「うるせえ！これでも食え！」 杏子からもらったチョコバーに涙を流しながらむしゃぶりつくチノ。 「おいしい…おいしいよぅぅ」 「効率的に魔女退治ができると思ってこの仕事をやってたが、当てが外れたな」 「そいつ始末するんで引渡してくだせぇ」 子猫のように杏子の傍から離れようとしないチノ。 「おい！報酬はいいからこいつをもらっていくぞ！文句ないよな！」 黙ってうなずくしかないガイド。 「収穫どころかお荷物が増えちまったなぁ…マミになんて言おう」 二人を乗せた旅客機は一路日本へと向かう。