言ってくれないと分からない を含むイラストが 1 件見つかりました ( 1 - 1 件目を表示 ) タグで検索

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 どんなに努力してもあの夢を時々見る、川内と夜戦を終えて泥のように眠りについても見てしまう日もある、でもそれはまだ自分が弱いからなんだ。もっと頑張らないと。 「あれ?」  出撃中で敵が目の前にいるのに自分の体が固まってしまって指先ですら動かせられない。砲撃が直撃して大破しても不思議と全然痛くない……死ぬかも知れないのに恐怖が全く無い。 「酒匂さん! 魚雷!」  遠くから江風の声が聞こえる。魚雷が近づいている音も聞えているけど、ただ無気力になっていて避ける気が湧いて来ない。もしこのまま魚雷に当たって死ぬことが出来ればあの夢を見なくても済むかもしれない、今感じている痛みなんて夢の痛みを比べれば大したものでは無い、私は夢から解放されるんだ。 「あ、目が覚めましたか?」  気が付くと自分は船渠室にあるベッドで横になっていた。明石の隣には申し訳なさそうな顔をする川内もいた。 「酒匂さん、あなたは提督から完治した後も出撃及び演習の禁止命令が出ています。よは「気を休めていろ」と言う事です」  明石から渡された紙には提督自筆に判子まで押された禁止命令書だった。提督からの直接命令ならば大人しくする以外の選択肢は無い。明石の説明を終えると川内が御参りをするかのように手を合わせた。 「酒匂本当にごめん! 体調も考えずに夜戦に誘っちゃって!」 「大丈夫だよ、そんなに気にしないで」  夕方頃になると矢矧がやって来て、明石に軽い挨拶をしてから自分が寝ているベットの横に立った。 「酒匂、あなた急に追加演習をやるようになったけど、何かあったの?」 「何でもないよ……ただ、強くなりたかっただけ……」 「じゃ何で強くないたいと思ったの? 言ってくれないと分からないわ」 「ごめんね、ちょっと血迷っただけだから」 「ふ~ん、まあ体調に気をつけなさい」 「ありがとう」  軽く手を振ると矢矧はその場で半回転して去って行った、どうせ夢を見なくなくなる為に演習した、と言っても意味が無いし、こんな思いを抱くのも間違っている。衰退した老人がただ死が来るのを呆然と待つように寝る。もう色々と疲れてしまった。何で自分はあの時死ねなかったんだろう? 死にたい。

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