海斗が響の痕跡……彼女のハンチング帽を持ち帰ったその夕刻、如月は左舷甲板上に佇む暁の姿を見かけた。 　先の戦闘時、意識不明のまま艦内のファクトリーに送られた彼女は、そのまま石動の全システム停止の余波に巻き込まれ、意識を取り戻したのは何もかもが終わってしまったあと、石動が鎮守府に戻って修理を受けている最中のことだった。 　即座に展開されると信じていた響の捜索も一切行う事が出来ず、助けることもできないままただ眠ることしか出来ていなかった事実に、暁は半狂乱寸前まで陥っていたのだが、ここ最近は随分落ち着いていると聞く。 　だが、それでも海域捜索任務への参加は海斗の判断で見送られ、彼女はただ一日中響の消えた海を見つめることしか出来なかった。 　あの海域に戻って今日で3日目。痕跡を見つけたことで少しは気が紛れるかと思ったのだが……ここ数日、全く食事も取らずただ立ち尽くすだけのその姿を、如月は見つめることしかできなかった。 海斗「ああ、そうだ。明日からは「例のモノ」も使って捜索範囲を広める。そのつもりで行動してくれ。それと……ん？如月？」 　執務室で電話中だった海斗に如月は声をかけてしまう。 如月「司令、お時間ができたら、お願いがあるのですが」 海斗「……。」 ピッ 海斗「時間できたよ。珍しいね、如月がお願い事なんて。何をすればいいのかな？」