60年前にパオラで最も激しい上陸戦闘が行われた場所、その島の突端に作られた墓標。 「強大な敵の中でただ一人、我らの友となり得た娘、ここに眠る。 　海の慈悲、空の慈悲、そして大地の慈悲が、彼女と共に在らん事を」 千尋「パオラのために、頑張り続けとったヒラヌマはんが父さんに殺されて、そん娘んうちが生き残ってないないするなんて……あんまりですわ……」 睦月「パオラを銀咲の懲罰軍から守るために用意した艦娘達は、皆銀咲において不要とされ処分された者たちだった。皆、ヒラヌマの意志に同調して死兵となって抵抗したそうよ。一人残らず、撃破されてしまったけれど……」 如月「彼女たちの抵抗があったから、私達が間に合った……その意志と行動は、決して無駄ではなかった。彼女達こそが、パオラの人々の願いを叶えたのよ」 千尋「如月はん……願いを叶えるために、誰かを犠牲にせなならへんのどすか？そない悲しい事でしか、願いは叶いまへんでっしゃろか?もしそないなら……うちは願い事などしたくへん！」 如月「誰かの願いが叶うころ、別の誰かが泣いている。皆の願いは一度には叶わない……それは決して避ける事の出来ないもの。人の想いは人の数だけあって、一つとして同じものはないから。私には私の、姉さんには姉さんの、そして貴女達には貴女達の願いがある。それらがすべて違っているから、人は競い合い、争い、奪うの。 　けれど、心の願いが全て一度に叶ってしまったら……人である意味は無くなってしまう。秩序も文化も、人である意味さえもない混沌……銀千代が齎そうとしている「平等」とは、そういうものなの。耳当たりのいい、けれども決して許すわけにはいかない理想……欲望という名の怪物を野放しにするわけにはいかない。彼の願いは叶わないわ」 如月「私達の悲願はここに成された……残された最後の約束が果たされ、新たな時代が幕を開ける。この先の未来は、貴女達のもの。願い全てを叶える事は出来なくても、尊い想いを護り伝える事はきっとできるはず。その役目を貴女達に託します」 睦月「喧嘩しちゃだめよ?未来は皆に平等なんだからねっ!」 Before　im6369967　　Next　im6401805