エルフの里ならびに薬草園周辺は、すでに雪景色が広がっています。 薬草園もまもなく降雪の見込みで朝晩は暖炉に火を入れるほど冷え込んでいますが、雪に閉ざされる前の収穫や刈り込みで大忙しです。 「今日は陽射しが暖かいですわあ」 「外で食べられるご飯も今日で最後かもね、れむルカ」 「せっかく徴用のひとたちまで大勢手伝いに来てユーク様が賄いやるほどの大賑わいなのに、わざわざお弁当ですかあ。クラン様もあまのじゃくですねえ」 「ユーク兄さまの煮込み料理はいつでも食べられるし、ちょっと時間を置いた残りものの方が味がしみて美味しいからいいの」 「残りもの余りますかねえ？　鍋をカラにされるどころか皿まで舐めつくされそうですよお」 「その時はまた作ってもらうもん。どうせ隣に住んでいるのだから、お願いすれば火を熾してくれるわよ」 「雪降っている間は温室での作業か炭焼きが中心になりますねえ」 「さしあたって、今年中の仕事はクリスマスツリーと門松の栽培かなあ」 「ああ、あれ去年評判良かったらしいですねえ」 「各サイズ揃えたのが好評だったみたい。集団部屋のひとたちもみんな、小型のをベッド脇や机に置いてイベント気分になれたってアルメリアが言ってた」 「うまいことに松の内が明けて一週間後、神社に持っていってお焚き上げするサイクルが出来上がりましたからねえ。門松やツリーと引き換えに、一緒に焼いていた餅や焼き芋やふるまい酒をいただけるんで、みんなタダ酒目当てに集まるようなりましたわあ」 「魔法薬が売れるのはありがたいけどいろいろ気分的に複雑だし、今年もおめでたいツリーや門松を買ってもらって、薬草園も頑張って稼がなくっちゃね」 「クラン様、今年はお仕事ほどほどにお願いしますよお。去年なんてクリスマス当日に寝込んだおかげで、せっかくのごちそう食べそこねたじゃないですかあ」 「今年は大丈夫よ……たぶん。収穫の時は兄さまや姉さまたちが応援に駆けつけてくれるって言ってたから」